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30代前半のOLが学び直しをきっかけに少しずつ人生を上向きにしていくブログ

人生100年時代構想会議開催に思うこと – 今、人生100年時代について議論する意義

9月11日、人生100年時代構想会議の第一回目が開催されました。

8月3日の内閣改造で安倍政権が看板政策として打ち出した「人づくり改革」の流れで発足したこの会議。人生100年時代を見据え、「いくつになっても学び直しができ、新しいことにチャレンジできる社会」を実現するため、経済や社会システムのありかたを検討していくということです。

社会人の学びを一応テーマに掲げているブログとしては、第一回目の会議でどのような議論が交わされたのか、非常に気になるところです。生憎議事録はまだ上がっていないようですが、安倍首相の挨拶や当日参加者の配布資料などから断片的に見えてくる部分もあります。今日は、そんなところについて思う事や今後期待することなどを、緩やかに書き綴りたいと思います。

今、人生100年時代の政策について議論する意義

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そもそもこの会議についてとやかく言う前に、多くの人はこのような疑問を胸に抱くかもしれません。「なぜ今、人生100年の前提で議論なんかしてるのか」と。確かに2017年の現在、日本人の平均寿命は男女ともに80代です。また、「日本人の平均寿命もこの辺で頭打ちなのでは?」という人もいます。「人生100年だなんて大仰な、自分はそんなに長く生きないよ」と多くの人は思うかもしれません。

しかし人生100年というのも、あながち大げさな数字ではなくなってきています。例えば厚生労働省の今年の発表によると、現在日本に住む100歳以上の高齢者の総数は67,824人だそうです。昨年の発表では65,692人ということでしたから、この一年で二千人以上も増加していることになります。さらに、100歳人口の予備軍ともいえる90歳代の人口を見てみると、なんと今年初めて200万人に達したそうです(厚生労働省調べ)。200万人と言えば、ちょうど札幌市の人口と同じくらいです。そのくらいの数の90歳代の人口が既に今日の日本にいて、そこから毎年一定数が100歳人口の仲間入りをしていくのだと思えば、人生100年時代は決して遠い未来の話ではなく、既に到来していると言っても過言ではないかもしれません。

人生100年時代に私たちの人生はどう変わる?

そんな人生100年時代の到来が、私たちの人生にどのような影響を及ぼすのか、最近よく議論されています。よく言われるのが、現在一般的である教育・就労・老後の3ステージ型人生モデルの崩壊です。つまり、20代前半までは学校で教育を受け、その後就職して60代まで働き、以降は引退して余生を送る、という直線状の人生モデルはもはや通用しなくなるだろうという考え方です。理由は簡単で、老後が長引くことにより、老後のコストを60代までの貯蓄では賄いきれなくなるためです。その代わりに注目されているのが、「マルチステージ型」の人生モデルです。人生の様々な局面に合わせて、学びと労働を交互に行い、時にはそれらを両立させながら、時代に合った人生やキャリアを紡いでいくという考え方です。例えば、若い時は旅行(留学)やスモールビジネスの起業などを通して経験値を付け、その後経験を生かして正社員としてバリバリと働き、その後学び直すために少しキャリアをセーブして大学へ戻る。復帰後はフリーランスや非営利活動など、様々なビジネスや活動を組み合わせてキャリアの多元化を図る、という風に、人生の様々な局面に合わせて働き方や学び方を柔軟に変える概念です。このあたりは、リンダ・グラットン著『ライフ・シフト』に詳述されていますので、ご興味のある方は読んでみてください。

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今後ますます高まる「学び直し」の意義

ここで鍵となるのが当ブログのテーマでもある学び直しです。この不確かで競争の激しい世の中を生き抜いていくためには、学び続けることで自分の知識や経験を常にアップデートし続けていくことがとても重要となります。アメリカでは2011年の時点で、当時の義務教育の子どもたちの65%が今はまだ存在しない職業につくという予測ニューヨークタイムズ紙に載り、話題となりました。今私たちが想像すらしていないような職業が、これから十数年の間に市場に溢れるだろうというのです。そんな世の中で長い人生をまっとうするには、やはり学び直しが鍵になると思われます。

実際、私自身も断続的にではありますが、働きながら学び続けることで道を切り開いてきました。新卒で就職をしたその年にリーマンショックが起こり、経済界が大混乱する中リストラを二度経験しました。その後何とか再就職を果たしましたが、アシスタント職からの再スタートとなるなど、厳しいキャリアの局面をいくつか経験しました。しかし仕事を続けながらオンラインを中心に大学院に通ったり一年間休職して海外留学に挑戦したりもしながら、少しずつキャリアの軌道修正をしてきました。今何とか労働市場で生き残れているのは、このように断続的にも学び続けてきたおかげだと思っています。現代社会を生きる社会人にとって、学び直しはもはや必要不可欠なことだと、私は自分自身の体験から実感しています。

人生100年時代構想会議のポイント

このように人々が学びと就労を両立させながら長寿をまっとうしていく社会を見据え、本会議では今後の社会システムについて議論していくものと思われます。会議資料によると、具体的には以下のようなテーマについて扱うとのことです。

  • 全ての人に開かれた教育機会を確保する。さらに何歳になっても学び直しができるよう、リカレント教育を充実する。
  • これら教育の主な受け皿となる大学を中心とし、高等教育改革を行う(若い学生のみを対象とした一般教養の提供のみでは社会ニーズに応えられないため)
  • 企業の人材採用を多様化させる(新卒採用過重主義からの脱却を図る)
  • 社会保障制度の見直しを行う(高齢者向けから全世代型の社会保障へ)

「人生100年時代構想会議」の目的と主要テーマより

尚議論のメンバーには、10代から80代までバックグラウンドも異なる多彩な顔触れを迎えています。下は大学生起業家の三上洋一郎氏から、上は今話題の80代ゲームアプリ開発者の若宮正子さんまで。さらに、日本でもベストセラーとなった『ライフ・シフト』のリンダ・グラットン氏をわざわざイギリスから招いてメンバーに加えているところをみても、中々本気度が伺えます。今後このメンバーでどのような議論が交わされるのか、引き続き注目していきたいところです。

会議資料などを見て思うこと

ちなみに記念すべき第一回の会議においてどのような議論が交わされたかについては、安倍首相の挨拶の中で、以下のように論点が整理されています。

  1. 全ての人に開かれた大学教育の機会を確保する。具体的には、経済的に恵まれない若者が勉学に専念できるよう、給付型奨学金や授業料の減免などを拡充・強化する方向で議論する。
  2. 大学改革を行う。具体的には、IT人材の育成や職業教育(リカレント教育)の充実を通して、社会人の多様な学習ニーズの受け皿となれるよう大学を変えていく。またそれら教育を受けた人たちに就職の道が開かれるよう、産業界にも人材採用の多様化を検討してもらう。
  3. 全世代型社会保障への改革を検討する。待機児童対策や幼児教育無償化の促進、また介護離職ゼロを目指して介護人材の確保をしっかりと進める。
  4. これら政策を実行するための財源を確保する。

この内容を読んで、私の胸にはいくつかの疑問や思うところが浮かんできました。

このブログは別に政策を議論するのが目的ではありませんが、働きながら学び直しを実践するいち社会人の目線から感じたこととして、ここに記述しておきたいと思います。

まず、経済的に恵まれない若者のために授業料の減免や給付型奨学金を充実させるのは良いのですが、その「経済的に恵まれない若者」とは一体誰の事なのかということ。若手社会人のことを指しているのであれば話は分かりますが、これから大学進学を目指す中高生のことまで含んでいるのであれば、この会議の中で議論すべきトピックからは少々ずれているように思います。人生100年時代においては、社会人としてのキャリアの期間も必然的に長期化します。働き手としての人生が長くなるにもかかわらず、社会はより複雑さを増し、競争も激しくなるからこそ、対策が必要なのです。経済支援が必要な中高生や大学生に対する支援政策は、それ自体はとても大切なことですが、この会議の本旨とは種類の異なる問題だと思います。この点をクリアにし、分けて議論して頂きたいと思います。

第二に、大学改革の文脈で「IT人材の育成」という言葉が出てきていますが、大学改革においてはIT人材をいかに育成するかよりも、ITを活用していかに学びを多くの人に開いていくかの方がより重要だと思います。ITを活用すれば、時間的・場所的な制約の多い社会人でももっと気軽に学ぶ事ができるようになり、それを社会へダイレクトに還元できるようになります。私自身、オンラインで通える大学院がなければ、修士号を目指すことは不可能でした。IT人材の育成も今後の社会を見据えると確かに重要な課題ではありますが、上記の若年者貧困層向け就学支援の話題と同様、ここで直接議論すべき問題ではないと思います。それよりも、高等教育のEdTech改革につき、急ピッチで検討して欲しいと思います。

最後に、待機児童対策と並行して幼児教育無償化の話が出てきていますが、なぜこの文脈で幼児教育無償化の話が出てくるのか、私にはよくわかりません。子育て世代の就労・学び直し支援という観点からすれば、待機児童対策の方が圧倒的に優先順位は上だと思います。3才から5才までの教育費が無料になったところで、子育て世代の親がその浮いたお金を親の教育に充てるかというと、実際そうはなりません。働き続けたい(学び続けたい)パパやママにとっては、子どもが0歳(遅くとも1歳)の時点で預ける先が確保できるかどうかに全てがかかっているといっても過言ではありません。それができなければ、キャリアも学びも結局中断せざるを得ないためです。このあたりの優先順位についても、しっかりと認識して欲しいと思いました。

おわりに

今日は人生100年時代構想会議について、資料などから見えてきた部分につき個人的に思うところを書いてみました。議事録は今後アップされるのでしょうか。今後の情報公開を待ちたいと思います。

現在義務教育を受けている子どもたちが社会に出るころには、今はまだ存在しないような職業が山ほど存在すると言われます。考えてみればあと十数年後の話です。近い将来必ず訪れる社会に、私たち働く社会人はどう対応していくべきなのか。このブログでも引き続き考えていきたいと思います。