ShioriLearns

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アメリカだけじゃない! 今、ヨーロッパのEdTechがこんなに面白い

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テクノロジーを使った新しい学びの形、EdTech(エドテック)について前回の記事でお話しました。

EdTechは、コンピューターやスマートフォンなどを使って、いつでもどこでも自由に学ぶことを可能にする、夢のようなテクノロジーです。デジタルの力で学びをより低コストに、かつ身近で楽しいものにしてくれるサービスが、次々と登場しています。

低コストかつ高品質なサービスの代表例としては、Kahn AcademyやCourseraなどで有名なMOOCsがあります。また、一部のスマートフォンアプリなど、ゲーム要素を上手く取り入れて学習者を惹きつけることに成功しているものが多くあります。

ちなみにEdTechがアメリカ生まれのムーブメントであるためか、EdTechといえばアメリカ(シリコンバレー)、というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、今やEdTechは世界に広がっており、革新的な商品やサービスが世界各地で産声を上げています。中でも最近盛り上がりを見せているのが、ヨーロッパのEdTechです。特にイギリスとフランスは、ヨーロッパにおけるEdTechの二大産業拠点となっています。今回は、普段日本であまり注目を浴びることのないヨーロッパのEdTechについて、イギリスとフランスに注目しながらご紹介します。

イギリス:長年の教育ノウハウでヨーロッパEdTech界を牽引するパイオニア

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まずはイギリスについて見てみましょう。Brexitを表明後も国際社会の表舞台に立ち続けるイギリスですが、EdTech界においても圧倒的な存在感を放ち続けています。イギリスには従来から、EdTechが開花する土壌が存在していました。その土壌を作ったのは、過去数百年にわたってイギリスが蓄積してきた通信教育に関するノウハウです。

イギリスのオンライン大学がすごい

イギリスのEdTechの最大の特徴は、単に学んで終わりではなく、大学の学位まで取得できるプログラムが充実していること。イギリスでは、オンラインで受講できる学位コースが充実しており、その数は他国と比になりません。今や、オックスフォードやケンブリッジといった名門大学を含め、イギリスの主要大学のほとんどが何かしらのオンライン学位プログラムを提供しているといってもいいほど。内容も幅広く、学部レベルから修士、そしてなんと博士号まで(!)カバーされており、専攻分野も多岐にわたるので、求めているプログラムがきっと見つかるでしょう。また、100%オンラインで修了できるものもあれば、オンラインとオンサイト(現地での履修)を組み合わせて受講できるものもあり、ライフスタイルによって柔軟に受講方法を選べます。もしも100%オンラインで受講できるものを選んだ場合は、言ってしまえば一度もイギリスに足を踏み入れることなくイギリスの大学の学位を取ることだって可能なわけです。すごい時代になりましたね。

これらオンライン大学は、日本で働く社会人にとって非常に大きなメリットがあると思います。つまり、日本でフルタイムの仕事を続けながら、夜や週末に勉強して、海外の大学院の学位を得ることができるわけです。この場合キャリアを中断せず学び続けられますし、収入減が確保されているのでお金の問題で頭を悩ませることもありません。日本でキャリアアップを図りたい社会人には、うってつけのオプションと言えるでしょう。

ちなみに、私もイギリスのオンライン大学院を修了した一人です。私は、2014年からロンドン大学ユニバーシティカレッジの修士課程で学び、2016年に修了、無事MA in Education(教育学修士号)を授与されました。この間夏休みなど一部の期間を除いて、基本的にずっと日本で働きながら学んでいました。私の場合、イギリス現地での受講も組み合わせたので、100%オンラインというわけではありませんでしたが、希望によっては100%オンラインで受講することも可能なプログラムでした。詳しいことは、今後改めて体験記として公開していきたいと思っています。

ちなみに私が学んだロンドン大学の通信課程は、150年の長きにわたり世界中の学習者たちに通信教育を提供してきたことで知られています。このプログラムの著名な受講生には、故ネルソン・マンデラ氏などがいます。彼はアパルトヘイト下の南アフリカで、27年間にもわたる投獄生活を送る中、ロンドン大学の通信課程に在籍し法律のコースを受講していました。ロンドン大学に限らず、イギリスの大学の多くは、通信教育に関し長い歴史を持っています。その背景には、大航海時代から続く植民地政策の中で、イギリス式の教育を世界中の植民地に届けるべく通信教育のノウハウを蓄積して来た歴史があります。イギリスの通信教育は、このような経緯の中で独自に発展して来たのです。このノウハウが、現代のインターネット社会において、イギリスがオンライン教育のリーダーとして開花するための下地を作ったことは想像に難くありません。

 

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イギリスのEdTechスタートアップがすごい

イギリスのEdTech界で存在感を見せるのは、老舗大学だけではありません。教育系スタートアップが近年目覚ましい発展を見せています。実際、ヨーロッパ発で現在有名になっているEdTechスタートアップの多くは、イギリス生まれという状況が起こっています。どれほどイギリスのEdTechスタートアップ勢が勢い付いているかを知れるのが、毎年ヨーロッパの都市で開催されるEdTechの国際的祭典「EdTech x Europe」カンファレンスです。このカンファレンスでは、毎年世界中のEdTechスタートアップの中で最も創造的かつ成功を収めた企業20社を表彰していますが、2016年の最優秀企業20社のうち、約半数の9社をイギリス勢が占めるという状況が起こりました。表彰された企業のサービスの内容も幅広く、例えばプログラミングを体感的に学べるおもちゃや、キャリアマネジメント用のプラットフォームなど、多種多様な顔ぶれがランクインしました。今後、ますますの発展が期待されます。

(ちなみに、この年は日本企業のライフイズテック株式会社が堂々ランクインしたことで、日本でも話題となりました。) 

フランス:政府から個人まで全員参加で盛り上げる!ヨーロッパEdTechの一大エコシステム

次にご紹介するのは、文化の香り漂うフランスからのEdTech。フランスと聞いて、まずITやデジタル技術を連想する人はそう多くないと思われますが、実は昨今EdTechスタートアップを多数輩出するヨーロッパの中のEdTech大国です。フランスでは、政府から個人学習者までが一丸となってEdTech産業を盛り上げようとする気運があります。

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フランス政府が推し進めるEdTech改革

フランスでは2010年代以降、政府主導でデジタル教育に関する改革が推し進められてきました。その代表例が、フランス・デジタル大学(FUN)です。フランス・デジタル大学とは、2013年にフランス政府主導で立ち上げられたフランス語MOOCsの総合プラットフォームです。フランス国内はもちろん、スイスやベルギー、カナダ等のフランス語圏から名門大学が多数参加し、フランス語によるオンライン講義を数多く配信しています。世界中から十数万人規模の受講者を集める人気コースなども登場しており、一大プラットフォームへの成長を遂げているようです。

大学に関連した話題をもう一つ。フランス随一の国立大学であるパリ大学では、近年EdTechに特化した修士課程コースを開設しました。その名も、「EdTech Master」(※通称。正式名称はMSc. in Educational Technologies)。何を隠そう、ここは私が今年の7月まで在籍した修士課程です。EdTech Masterでは、教育分野の専門家やEdTech界の実務家を講師に招き、EdTech分野の専門家を輩出すべく実践的な教育を行っています。さらにフランス政府や民間企業とEdTechに関する共同研究を行ったり、学校向けのプログラム開発に関わったり、一般市民に開かれた教育関連のイベントを定期的に開いたりなど、産官学民全てのセクターにまたがってEdTech普及のための活動をしています。

ちなみに、フランス政府主導のEdTech改革といえば、もう一つ大きな柱があります。それは、今後フランス国内の公立学校に通う子どもたち全員に、一人当たり一台のタブレットPCを配給するというものです。これ、どこかで聞いたことありませんか?そう、日本政府も、2020年までに生徒一人に対し一端末配給を実現しようとしていますね。実現したあかつきには、両国の子どもたちがiPadを使って国際交流、なんていうことが起こったら面白いですね。

フランスのスタートアップも負けていない

先ほどイギリスのスタートアップの目覚ましい活躍について書きましたが、フランスのスタートアップだって負けてはいません。フランスのEdTechスタートアップが国際的な注目を浴びるようになったのは、やはりEdTechの祭典「EdTech x Europe」カンファレンスでのことでした。2015年に発表された最も優秀なEdTechスタートアップ20社のうち、フランスは非英語圏としては異例の、3企業ランクインという快挙を成し遂げたのです。そのうち一社「digiSchool」については、最優秀賞を受賞するなど、そのサービスの内容にも高い評価を受けました。

今年2017年にも、フランスより1社が堂々ランクインしています。プログラミングやIT分野に特化したオンラインレクチャーを数多く無料配信するプラットフォーム、「Open Classroom」です。この「Open Classroom」の創業者であるマチュー・ヌブラ氏とピエール・デュビュック氏は、創業時にたった13歳と11歳であったということで、フランス国内で大きな話題を呼びました。世界的に見ても、当時最も若く勇敢な起業家たちであったことでしょう。ちなみにこの「Open Classroom」、前オランド政権下では失業者向けの職業教育にも利用されており、オランド前大統領がウェブサイトのトップページに動画メッセージを寄せていたこともありました。マクロン大統領政権下では、どのように活用されていくのでしょう。新大統領のEdTech政策と合わせて、注目していきたいところです。

一方「EdTech x Europe」カンファレンスで講演者として毎年おなじみの顔になりつつあるのが、「EdTech World Tour」の創始者、スヴェニア・ブッソン氏です。彼女はEdTech視察のための世界一周ツアーを敢行したことで一躍時の人となった若きフランス人女性ですが、今やEdTech界のオピニオンリーダーの一人として定着しつつあります。私もEdTech Masterに在籍していた際、二度ほどお会いしたことがありますが、小柄な体から好奇心が溢れ出す、とてもエネルギッシュな女性でした。今は世界一周で培った経験と知識をもとに、「Learn Space」という名のEdTechスタートアップを設立しています。始まったばかりでウェブサイトも未だ準備中のようですが、EdTech World Tourにご興味を持たれた方は、今後の彼女の活躍にも注目してみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は、日本ではなかなか注目を浴びることのないヨーロッパのEdTechシーンについてご紹介しました。それぞれ独自の発展を遂げてきたイギリスとフランスのEdTech界。歴史に裏打ちされたレベルの高いプログラムを提供するイギリスのオンライン大学に、個性が光るフランスのスタートアップ企業群。それぞれ、今後の発展が楽しみですね。EdTechといえばシリコンバレー、というイメージをお持ちだった方も、今後は発展目覚ましいヨーロッパのEdTech界に是非注目して頂ければと思います。

私がフランスのパリ大学でEdTechに関して学んできた内容についても、今後詳しくお話していきたいと思っています。